● 祖母は若い頃、縫い物のお師匠さんで
何人ものお嬢さんに教えていたらしい。
戦時中は 縫って縫って縫いまくって 縫子で一家を支えた。
ワタシが縫い物に興味を持った頃には
もうやってなかった。
いま 祖母は96で老人施設にいる。
骨折がきっかけで、認知症になってしまった。
愛想よくワタシに対応しているが、
実はワタシが誰かわかってない。
わからないことを悟られないようにもしている。
気を使ってボケている。
施設の壁に「今年の抱負」が各々はってあり
だいたい「健康で暮らします」的なことが書いてある
祖母のは「ぬいものがんばります」と書いてあった。
!!!
「まだ縫うんかいな もうええやろ」
と、つっこんでおくが、どこか抓ってないと涙腺にくる。
亡き祖父に つれなく接したことを悔いているらしい。
「もっと優しくしたげたらよかったなぁ」と言う。
「でも顔みたら なんやねんこんなひとって思てまうねん
今度あったら優しくしてあげられるやろうか またあえるんやろか」
「さぁ しらん」
泣くのをこらえるので必死だった。
祖母はこうなる前から
「泣かせ上手」という必殺技をもっていて
うっかりしていると絶対泣かされる。
ぐっとくるツボを知っているのだ。
昔から泣かされまいと応戦してきたワタシにはわかる。
技に磨きがかかってる。
「もういつ逝ってまうかわからんからまたあいにおいで」
「逝かんといて」
「無茶いいな」
そっくりな顔して「ししし」と笑った。
何度忘れてくれてもいいので
長生きしてください。
この技のすごいのは後からも効いてくることで
今また泣きそうになってる(抓)
(ミクシー移植日記)